有価証券報告書の読み方|企業の詳細情報を入手する
有価証券報告書(有報)は、上場企業が金融商品取引法に基づいて提出する法定開示書類です。決算短信よりも詳細な情報が記載されており、企業分析の基本資料となります。
有価証券報告書とは
概要
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 提出先 | 金融庁(EDINET経由) |
| 提出期限 | 事業年度終了後3ヶ月以内 |
| 監査 | 監査法人による監査が必須 |
| ページ数 | 100〜300ページ程度 |
| 閲覧方法 | EDINET、企業IRサイト |
対象企業
有価証券報告書の提出義務は、主に以下の条件で発生します:
- 上場企業: 金融商品取引所に上場している企業
- 届出書提出企業: 有価証券届出書を提出して募集・売出しを行った企業
- 所有者数基準: 有価証券を発行しており、かつ所有者数が一定数(株券の場合500名)以上となった企業
※「株主数500名以上」だけで自動的に提出義務が生じるわけではなく、有価証券を発行している等の前提条件があります。
有価証券報告書の構成
有報は以下の章立てで構成されています。
第一部 企業情報
第1 企業の概況
- 主要な経営指標等の推移
- 沿革
- 事業の内容
- 関係会社の状況
- 従業員の状況
第2 事業の状況
- 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等
- 事業等のリスク
- 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュフローの状況の分析(MD&A)
- 経営上の重要な契約等
- 研究開発活動
第3 設備の状況
- 設備投資等の概要
- 主要な設備の状況
- 設備の新設、除却等の計画
第4 提出会社の状況
- 株式等の状況
- 自己株式の取得等の状況
- 配当政策
- コーポレート・ガバナンスの状況等
第5 経理の状況
- 連結財務諸表等
- 財務諸表等
第6 提出会社の株式事務の概要
第7 提出会社の参考情報
第二部 提出会社の保証会社等の情報
(該当がある場合のみ)
注目すべきセクション
1. 主要な経営指標等の推移
過去5年間の主要指標が一覧で確認できます。
| 確認項目 | 見るポイント |
|---|---|
| 売上高・利益の推移 | 成長トレンド |
| 自己資本比率 | 財務の安定性 |
| ROE | 収益効率 |
| 従業員数 | 組織の拡大・縮小 |
| 配当性向 | 株主還元の方針 |
2. 事業の内容
企業がどのような事業を行っているかを理解するために重要です。
- 事業セグメントの構成
- 各事業の概要
- グループ会社の役割
- 事業系統図(ビジネスモデルを図解)
3. 事業等のリスク
最も注目すべきセクションの一つです。
企業が認識しているリスクが具体的に記載されています。
| リスクの種類 | 例 |
|---|---|
| 事業リスク | 競合の激化、技術革新 |
| 財務リスク | 為替変動、金利上昇 |
| 法務リスク | 規制強化、訴訟 |
| オペレーショナルリスク | システム障害、人材流出 |
| 自然災害リスク | 地震、パンデミック |
読み方のコツ:
- 前年からの変更点を確認
- 具体的な数値や事象があるか
- 対策が記載されているか
4. MD&A(経営者による分析)
経営者の視点で業績を解説するセクションです。
- 当期の業績概況と要因分析
- セグメント別の状況
- 財務状態の分析
- キャッシュフローの状況
- 重要な会計上の見積り
読み方のコツ:
- 業績の変動要因(数量・価格・為替など)
- 来期以降の見通し
- 課題と対策
5. 従業員の状況
| 確認項目 | 見るポイント |
|---|---|
| 従業員数 | 増減とその理由 |
| 平均年齢 | 組織の若さ |
| 平均勤続年数 | 定着率 |
| 平均年間給与 | 報酬水準 |
6. コーポレート・ガバナンスの状況
企業統治の状況を確認できます。
- 取締役会の構成(社外取締役の人数)
- 監査体制
- 役員報酬の決定方針
- 株式保有の状況(政策保有株式)
7. 連結財務諸表
監査済みの正式な財務諸表です。
- 連結貸借対照表
- 連結損益計算書
- 連結包括利益計算書
- 連結株主資本等変動計算書
- 連結キャッシュフロー計算書
- 注記事項
注記事項が重要:
- 会計方針
- セグメント情報
- 関連当事者取引
- 税効果会計
- 退職給付
- ストックオプション
有報の読み方テクニック
1. 目的を持って読む
全ページを読む必要はありません。目的に応じて必要な部分を読みましょう。
| 目的 | 読むべきセクション |
|---|---|
| 業績把握 | 主要指標、MD&A |
| リスク確認 | 事業等のリスク |
| 財務分析 | 連結財務諸表、注記 |
| 事業理解 | 事業の内容、事業系統図 |
| ガバナンス | コーポレート・ガバナンス |
2. 前年と比較する
変更点に注目することで、企業の変化がわかります。
- リスク項目の追加・削除
- 会計方針の変更
- セグメント構成の変更
3. 競合他社と比較する
同業他社の有報と比較することで、相対的な強み・弱みがわかります。
4. キーワード検索を活用
EDINETの検索機能やPDF内検索で、特定の項目を探せます。
例:「減損」「訴訟」「為替」「M&A」
有価証券報告書の入手方法
1. EDINET(金融庁)
https://disclosure.edinet-fsa.go.jp/
- 無料で閲覧可能
- 過去5年分を検索可能
- XBRL形式でのダウンロードも可能
2. 企業のIRサイト
多くの企業がIRページでPDFを公開しています。
3. 当サイト
上場企業の詳細ページから、EDINETの開示書類一覧にアクセスできます。
関連する開示書類
四半期報告書
四半期ごと(年3回)に提出される報告書です。有報より簡略化されています。
臨時報告書
重要な事象が発生した際に提出されます。
- 代表取締役の異動
- 主要株主の異動
- 重要な訴訟
- 災害による損害
訂正報告書
過去の報告書に誤りがあった場合に提出されます。
有報を読む際の注意点
1. 監査報告書を確認
監査意見を確認しましょう。
| 監査意見 | 意味 |
|---|---|
| 無限定適正意見 | 問題なし(通常) |
| 限定付適正意見 | 一部に問題あり |
| 不適正意見 | 重大な問題あり(まれ) |
| 意見不表明 | 監査ができなかった(まれ) |
2. 継続企業の前提
「継続企業の前提に関する重要な疑義」が記載されている場合、倒産リスクがあります。
3. 会計方針の変更
会計方針の変更により、前年との単純比較ができなくなることがあります。
まとめ
有価証券報告書は企業分析の宝庫です。
| セクション | 得られる情報 |
|---|---|
| 主要指標の推移 | 5年間のトレンド |
| 事業の内容 | ビジネスモデル |
| 事業等のリスク | 企業が認識するリスク |
| MD&A | 経営者の視点での分析 |
| 従業員の状況 | 人員・給与情報 |
| 連結財務諸表 | 詳細な財務データ |
決算短信で速報を確認し、有報で詳細分析するという使い分けがおすすめです。
当サイトでは、上場企業の財務ハイライトを簡単に確認できます。詳細分析が必要な場合は、EDINETで有価証券報告書をご確認ください。