有価証券報告書の読み方|企業の詳細情報を入手する

決算書の読み方11分で読める編集部

有価証券報告書(有報)は、上場企業が金融商品取引法に基づいて提出する法定開示書類です。決算短信よりも詳細な情報が記載されており、企業分析の基本資料となります。

有価証券報告書とは

概要

項目内容
提出先金融庁(EDINET経由)
提出期限事業年度終了後3ヶ月以内
監査監査法人による監査が必須
ページ数100〜300ページ程度
閲覧方法EDINET、企業IRサイト

対象企業

有価証券報告書の提出義務は、主に以下の条件で発生します:

  • 上場企業: 金融商品取引所に上場している企業
  • 届出書提出企業: 有価証券届出書を提出して募集・売出しを行った企業
  • 所有者数基準: 有価証券を発行しており、かつ所有者数が一定数(株券の場合500名)以上となった企業

※「株主数500名以上」だけで自動的に提出義務が生じるわけではなく、有価証券を発行している等の前提条件があります。

有価証券報告書の構成

有報は以下の章立てで構成されています。

第一部 企業情報

第1 企業の概況

  • 主要な経営指標等の推移
  • 沿革
  • 事業の内容
  • 関係会社の状況
  • 従業員の状況

第2 事業の状況

  • 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等
  • 事業等のリスク
  • 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュフローの状況の分析(MD&A)
  • 経営上の重要な契約等
  • 研究開発活動

第3 設備の状況

  • 設備投資等の概要
  • 主要な設備の状況
  • 設備の新設、除却等の計画

第4 提出会社の状況

  • 株式等の状況
  • 自己株式の取得等の状況
  • 配当政策
  • コーポレート・ガバナンスの状況等

第5 経理の状況

  • 連結財務諸表等
  • 財務諸表等

第6 提出会社の株式事務の概要

第7 提出会社の参考情報

第二部 提出会社の保証会社等の情報

(該当がある場合のみ)

注目すべきセクション

1. 主要な経営指標等の推移

過去5年間の主要指標が一覧で確認できます。

確認項目見るポイント
売上高・利益の推移成長トレンド
自己資本比率財務の安定性
ROE収益効率
従業員数組織の拡大・縮小
配当性向株主還元の方針

2. 事業の内容

企業がどのような事業を行っているかを理解するために重要です。

  • 事業セグメントの構成
  • 各事業の概要
  • グループ会社の役割
  • 事業系統図(ビジネスモデルを図解)

3. 事業等のリスク

最も注目すべきセクションの一つです。

企業が認識しているリスクが具体的に記載されています。

リスクの種類
事業リスク競合の激化、技術革新
財務リスク為替変動、金利上昇
法務リスク規制強化、訴訟
オペレーショナルリスクシステム障害、人材流出
自然災害リスク地震、パンデミック

読み方のコツ:

  • 前年からの変更点を確認
  • 具体的な数値や事象があるか
  • 対策が記載されているか

4. MD&A(経営者による分析)

経営者の視点で業績を解説するセクションです。

  • 当期の業績概況と要因分析
  • セグメント別の状況
  • 財務状態の分析
  • キャッシュフローの状況
  • 重要な会計上の見積り

読み方のコツ:

  • 業績の変動要因(数量・価格・為替など)
  • 来期以降の見通し
  • 課題と対策

5. 従業員の状況

確認項目見るポイント
従業員数増減とその理由
平均年齢組織の若さ
平均勤続年数定着率
平均年間給与報酬水準

6. コーポレート・ガバナンスの状況

企業統治の状況を確認できます。

  • 取締役会の構成(社外取締役の人数)
  • 監査体制
  • 役員報酬の決定方針
  • 株式保有の状況(政策保有株式)

7. 連結財務諸表

監査済みの正式な財務諸表です。

  • 連結貸借対照表
  • 連結損益計算書
  • 連結包括利益計算書
  • 連結株主資本等変動計算書
  • 連結キャッシュフロー計算書
  • 注記事項

注記事項が重要:

  • 会計方針
  • セグメント情報
  • 関連当事者取引
  • 税効果会計
  • 退職給付
  • ストックオプション

有報の読み方テクニック

1. 目的を持って読む

全ページを読む必要はありません。目的に応じて必要な部分を読みましょう。

目的読むべきセクション
業績把握主要指標、MD&A
リスク確認事業等のリスク
財務分析連結財務諸表、注記
事業理解事業の内容、事業系統図
ガバナンスコーポレート・ガバナンス

2. 前年と比較する

変更点に注目することで、企業の変化がわかります。

  • リスク項目の追加・削除
  • 会計方針の変更
  • セグメント構成の変更

3. 競合他社と比較する

同業他社の有報と比較することで、相対的な強み・弱みがわかります。

4. キーワード検索を活用

EDINETの検索機能やPDF内検索で、特定の項目を探せます。

例:「減損」「訴訟」「為替」「M&A」

有価証券報告書の入手方法

1. EDINET(金融庁)

https://disclosure.edinet-fsa.go.jp/

  • 無料で閲覧可能
  • 過去5年分を検索可能
  • XBRL形式でのダウンロードも可能

2. 企業のIRサイト

多くの企業がIRページでPDFを公開しています。

3. 当サイト

上場企業の詳細ページから、EDINETの開示書類一覧にアクセスできます。

関連する開示書類

四半期報告書

四半期ごと(年3回)に提出される報告書です。有報より簡略化されています。

臨時報告書

重要な事象が発生した際に提出されます。

  • 代表取締役の異動
  • 主要株主の異動
  • 重要な訴訟
  • 災害による損害

訂正報告書

過去の報告書に誤りがあった場合に提出されます。

有報を読む際の注意点

1. 監査報告書を確認

監査意見を確認しましょう。

監査意見意味
無限定適正意見問題なし(通常)
限定付適正意見一部に問題あり
不適正意見重大な問題あり(まれ)
意見不表明監査ができなかった(まれ)

2. 継続企業の前提

「継続企業の前提に関する重要な疑義」が記載されている場合、倒産リスクがあります。

3. 会計方針の変更

会計方針の変更により、前年との単純比較ができなくなることがあります。

まとめ

有価証券報告書は企業分析の宝庫です。

セクション得られる情報
主要指標の推移5年間のトレンド
事業の内容ビジネスモデル
事業等のリスク企業が認識するリスク
MD&A経営者の視点での分析
従業員の状況人員・給与情報
連結財務諸表詳細な財務データ

決算短信で速報を確認し、有報で詳細分析するという使い分けがおすすめです。

当サイトでは、上場企業の財務ハイライトを簡単に確認できます。詳細分析が必要な場合は、EDINETで有価証券報告書をご確認ください。