自己資本比率の見方|企業の財務安全性を測る
自己資本比率は、企業の財務安全性を測る最も基本的な指標です。倒産リスクの判断や取引先の信用調査に活用されています。
自己資本比率とは
定義と計算式
自己資本比率 = 自己資本 ÷ 総資産 × 100
会社の資産のうち、返済不要の自己資金がどれだけあるかを示す指標です。
貸借対照表での位置
┌──────────────────────────────────┐
│ 総資産(100%) │
├────────────┬─────────────────────┤
│ │ 負債(他人資本) │
│ 資産 │ →返済が必要 │
│ ├─────────────────────┤
│ │ 純資産(自己資本) │
│ │ →返済不要 ←これ │
└────────────┴─────────────────────┘
具体例
| 項目 | A社 | B社 |
|---|---|---|
| 総資産 | 1,000億円 | 1,000億円 |
| 負債 | 400億円 | 700億円 |
| 自己資本 | 600億円 | 300億円 |
| 自己資本比率 | 60% | 30% |
同じ資産規模でも、A社の方が財務的に安定しています。
自己資本比率の目安
一般的な評価基準
| 水準 | 評価 | 解説 |
|---|---|---|
| 70%以上 | 非常に安全 | 無借金経営に近い |
| 50〜70% | 安全 | 財務的に安定 |
| 40〜50% | 普通 | 一般的な水準 |
| 20〜40% | やや低い | 借入依存がある |
| 20%未満 | 要注意 | 財務リスクが高い |
| マイナス | 債務超過 | 要警戒 |
業種別の目安
業種によって適正水準は大きく異なります。
| 業種 | 平均的な自己資本比率 | 背景 |
|---|---|---|
| IT・ソフトウェア | 50〜70% | 設備投資が少ない |
| 製造業 | 40〜60% | 設備投資は必要だが安定 |
| 小売業 | 30〜50% | 店舗投資に借入を活用 |
| 不動産業 | 20〜40% | 物件取得に借入が必須 |
| 銀行・金融 | 5〜10% | レバレッジ経営が基本 |
注意: 銀行は預金を負債として扱うため、自己資本比率が低いのは正常です。
自己資本比率が低いとどうなるか
1. 倒産リスクの上昇
借入金が多いと:
- 金利負担が重い
- 返済原資が必要
- 業績悪化時に資金ショートのリスク
2. 金融機関からの評価低下
- 新規借入が困難になる
- 金利が上がる
- 取引条件が厳しくなる
3. 経営の自由度低下
- 投資判断が制約される
- 配当が出しにくい
- M&Aの機会を逃す
自己資本比率が高すぎるデメリット
1. 資本効率の低下
借入を活用しないと、ROE(自己資本利益率)が低くなりがちです。
2. 成長機会の逸失
手元資金に余裕があっても、借入による成長投資をしないと、競合に遅れを取る可能性があります。
3. 株主からの批判
「現金を貯めすぎ」「もっと投資や還元を」という声が上がることも。
関連する安全性指標
流動比率
流動比率 = 流動資産 ÷ 流動負債 × 100
短期的な支払能力を見る指標。200%以上が安全とされます。
当座比率
当座比率 = 当座資産 ÷ 流動負債 × 100
棚卸資産を除いた、より厳格な短期支払能力の指標。100%以上が目安。
有利子負債比率
有利子負債比率 = 有利子負債 ÷ 自己資本 × 100
借入金への依存度を示す。100%以下が望ましい。
インタレスト・カバレッジ・レシオ
インタレスト・カバレッジ・レシオ = 営業利益 ÷ 支払利息
利払い能力を示す。2倍以上あれば安心。
自己資本比率の推移を見る
単年度だけでなく、過去3〜5年の推移を確認しましょう。
改善傾向の場合
- 利益が積み上がっている
- 借入金を返済している
- 増資をした
ポジティブなサインです。
悪化傾向の場合
- 赤字が続いている
- 借入金が増加している
- 大型投資を実行中
悪化の理由を確認する必要があります。
注意点
1. 業種を考慮する
不動産業や銀行の自己資本比率が低いのは、ビジネスモデル上の特性です。同業他社と比較しましょう。
2. 総資産の内容を確認
自己資本比率が高くても、資産の質が悪ければ意味がありません。
- 不良債権はないか
- 減損リスクのある資産はないか
- 換金しにくい資産が多くないか
3. 連結と単体の違い
子会社の財務状況も含めた連結ベースで見ることが重要です。
4. オフバランス取引
リース取引や保証債務など、貸借対照表に載らない負債もあります。
自己資本比率を使った分析例
ケース1: 取引先の信用調査
新規取引先の決算書を入手した場合:
| チェック項目 | 結果 | 評価 |
|---|---|---|
| 自己資本比率 | 35% | △ やや低い |
| 流動比率 | 150% | ○ 問題なし |
| 直近3年の推移 | 30%→33%→35% | ○ 改善傾向 |
→ 改善傾向にあるので、注視しつつ取引可能と判断
ケース2: 投資先の財務分析
投資を検討している企業:
| チェック項目 | 結果 | 評価 |
|---|---|---|
| 自己資本比率 | 65% | ◎ 高い |
| ROE | 6% | △ 低い |
| 現金比率 | 40% | △ 現金過多 |
→ 財務は安全だが、資本効率に課題。株主還元や成長投資の方針を確認
まとめ
自己資本比率は財務安全性の基本指標です。
| ポイント | 内容 |
|---|---|
| 計算式 | 自己資本 ÷ 総資産 × 100 |
| 一般的な目安 | 40%以上で安全圏 |
| 業種差 | IT高め、不動産・銀行は低め |
| 見るべき点 | 水準だけでなく推移も重要 |
次の記事では、売上高と利益の関係について解説します。