自己資本比率の見方|企業の財務安全性を測る

決算書の読み方8分で読める編集部

自己資本比率は、企業の財務安全性を測る最も基本的な指標です。倒産リスクの判断や取引先の信用調査に活用されています。

自己資本比率とは

定義と計算式

自己資本比率 = 自己資本 ÷ 総資産 × 100

会社の資産のうち、返済不要の自己資金がどれだけあるかを示す指標です。

貸借対照表での位置

┌──────────────────────────────────┐
│           総資産(100%)           │
├────────────┬─────────────────────┤
│            │  負債(他人資本)      │
│   資産     │  →返済が必要          │
│            ├─────────────────────┤
│            │  純資産(自己資本)    │
│            │  →返済不要     ←これ  │
└────────────┴─────────────────────┘

具体例

項目A社B社
総資産1,000億円1,000億円
負債400億円700億円
自己資本600億円300億円
自己資本比率60%30%

同じ資産規模でも、A社の方が財務的に安定しています。

自己資本比率の目安

一般的な評価基準

水準評価解説
70%以上非常に安全無借金経営に近い
50〜70%安全財務的に安定
40〜50%普通一般的な水準
20〜40%やや低い借入依存がある
20%未満要注意財務リスクが高い
マイナス債務超過要警戒

業種別の目安

業種によって適正水準は大きく異なります。

業種平均的な自己資本比率背景
IT・ソフトウェア50〜70%設備投資が少ない
製造業40〜60%設備投資は必要だが安定
小売業30〜50%店舗投資に借入を活用
不動産業20〜40%物件取得に借入が必須
銀行・金融5〜10%レバレッジ経営が基本

注意: 銀行は預金を負債として扱うため、自己資本比率が低いのは正常です。

自己資本比率が低いとどうなるか

1. 倒産リスクの上昇

借入金が多いと:

  • 金利負担が重い
  • 返済原資が必要
  • 業績悪化時に資金ショートのリスク

2. 金融機関からの評価低下

  • 新規借入が困難になる
  • 金利が上がる
  • 取引条件が厳しくなる

3. 経営の自由度低下

  • 投資判断が制約される
  • 配当が出しにくい
  • M&Aの機会を逃す

自己資本比率が高すぎるデメリット

1. 資本効率の低下

借入を活用しないと、ROE(自己資本利益率)が低くなりがちです。

2. 成長機会の逸失

手元資金に余裕があっても、借入による成長投資をしないと、競合に遅れを取る可能性があります。

3. 株主からの批判

「現金を貯めすぎ」「もっと投資や還元を」という声が上がることも。

関連する安全性指標

流動比率

流動比率 = 流動資産 ÷ 流動負債 × 100

短期的な支払能力を見る指標。200%以上が安全とされます。

当座比率

当座比率 = 当座資産 ÷ 流動負債 × 100

棚卸資産を除いた、より厳格な短期支払能力の指標。100%以上が目安。

有利子負債比率

有利子負債比率 = 有利子負債 ÷ 自己資本 × 100

借入金への依存度を示す。100%以下が望ましい。

インタレスト・カバレッジ・レシオ

インタレスト・カバレッジ・レシオ = 営業利益 ÷ 支払利息

利払い能力を示す。2倍以上あれば安心。

自己資本比率の推移を見る

単年度だけでなく、過去3〜5年の推移を確認しましょう。

改善傾向の場合

  • 利益が積み上がっている
  • 借入金を返済している
  • 増資をした

ポジティブなサインです。

悪化傾向の場合

  • 赤字が続いている
  • 借入金が増加している
  • 大型投資を実行中

悪化の理由を確認する必要があります。

注意点

1. 業種を考慮する

不動産業や銀行の自己資本比率が低いのは、ビジネスモデル上の特性です。同業他社と比較しましょう。

2. 総資産の内容を確認

自己資本比率が高くても、資産の質が悪ければ意味がありません。

  • 不良債権はないか
  • 減損リスクのある資産はないか
  • 換金しにくい資産が多くないか

3. 連結と単体の違い

子会社の財務状況も含めた連結ベースで見ることが重要です。

4. オフバランス取引

リース取引や保証債務など、貸借対照表に載らない負債もあります。

自己資本比率を使った分析例

ケース1: 取引先の信用調査

新規取引先の決算書を入手した場合:

チェック項目結果評価
自己資本比率35%△ やや低い
流動比率150%○ 問題なし
直近3年の推移30%→33%→35%○ 改善傾向

→ 改善傾向にあるので、注視しつつ取引可能と判断

ケース2: 投資先の財務分析

投資を検討している企業:

チェック項目結果評価
自己資本比率65%◎ 高い
ROE6%△ 低い
現金比率40%△ 現金過多

→ 財務は安全だが、資本効率に課題。株主還元や成長投資の方針を確認

まとめ

自己資本比率は財務安全性の基本指標です。

ポイント内容
計算式自己資本 ÷ 総資産 × 100
一般的な目安40%以上で安全圏
業種差IT高め、不動産・銀行は低め
見るべき点水準だけでなく推移も重要

次の記事では、売上高と利益の関係について解説します。