主要な財務指標の見方|収益性・安全性・効率性を測る
財務指標とは、決算書の数字を使って計算する比率です。金額だけでは比較しにくい企業の状態を、指標化することで客観的に評価できます。
財務指標の4つの視点
企業を分析する際、以下の4つの視点から財務指標を見ることが重要です。
| 視点 | 何を見るか | 代表的な指標 |
|---|---|---|
| 収益性 | どれだけ効率よく稼いでいるか | ROE、ROA、営業利益率 |
| 安全性 | 倒産リスクはないか | 自己資本比率、流動比率 |
| 効率性 | 資産を有効活用しているか | 総資産回転率、在庫回転率 |
| 成長性 | どれだけ成長しているか | 売上高成長率、EPS成長率 |
収益性の指標
ROE(自己資本利益率)
ROE = 当期純利益 ÷ 自己資本 × 100
株主のお金をどれだけ効率よく増やしているかを示します。
| 水準 | 評価 |
|---|---|
| 15%以上 | 優良 |
| 10〜15% | 良好 |
| 8〜10% | 平均的 |
| 8%未満 | 要改善 |
※日本企業の平均は約9%、米国企業は約15%
ROA(総資産利益率)
ROA = 当期純利益 ÷ 総資産 × 100
会社全体の資産をどれだけ効率よく使っているかを示します。
| 水準 | 評価 |
|---|---|
| 5%以上 | 良好 |
| 3〜5% | 平均的 |
| 3%未満 | 要改善 |
売上高営業利益率
営業利益率 = 営業利益 ÷ 売上高 × 100
本業でどれだけ利益を出しているかを示します。
| 水準 | 評価 |
|---|---|
| 10%以上 | 高収益 |
| 5〜10% | 良好 |
| 3〜5% | 平均的 |
| 3%未満 | 薄利 |
※業種により大きく異なるため、同業他社との比較が重要
安全性の指標
自己資本比率
自己資本比率 = 自己資本 ÷ 総資産 × 100
返済不要の自己資金の割合を示します。高いほど財務的に安定しています。
| 水準 | 評価 |
|---|---|
| 50%以上 | 非常に安全 |
| 40〜50% | 安全 |
| 20〜40% | 普通 |
| 20%未満 | 要注意 |
流動比率
流動比率 = 流動資産 ÷ 流動負債 × 100
短期的な支払能力を示します。
| 水準 | 評価 |
|---|---|
| 200%以上 | 安全 |
| 120〜200% | 普通 |
| 100〜120% | やや低い |
| 100%未満 | 要注意 |
当座比率
当座比率 = 当座資産 ÷ 流動負債 × 100
※当座資産 = 現金 + 売掛金 + 有価証券(棚卸資産を除く)
流動比率より厳しく、すぐに現金化できる資産での支払能力を見ます。100%以上が目安です。
有利子負債比率
有利子負債比率 = 有利子負債 ÷ 自己資本 × 100
借入金への依存度を示します。100%以下が望ましいとされます。
効率性の指標
総資産回転率
総資産回転率 = 売上高 ÷ 総資産(回)
資産を売上獲得にどれだけ有効活用しているかを示します。
| 水準 | 評価 |
|---|---|
| 1.5回以上 | 効率的 |
| 1.0〜1.5回 | 普通 |
| 1.0回未満 | 資産効率が低い |
売掛金回転期間
売掛金回転期間 = 売掛金 ÷ (売上高 ÷ 12)(ヶ月)
売上代金を回収するまでの期間を示します。短いほど良いです。
棚卸資産回転期間
棚卸資産回転期間 = 棚卸資産 ÷ (売上原価 ÷ 12)(ヶ月)
在庫が売れるまでの期間を示します。長期化は在庫滞留のサインです。
成長性の指標
売上高成長率
売上高成長率 = (今期売上高 − 前期売上高) ÷ 前期売上高 × 100
売上の伸び率を示します。
営業利益成長率
営業利益成長率 = (今期営業利益 − 前期営業利益) ÷ 前期営業利益 × 100
本業の利益の伸び率を示します。売上成長率より高ければ、収益性が改善しています。
EPS成長率
EPS成長率 = (今期EPS − 前期EPS) ÷ 前期EPS × 100
※EPS(1株当たり利益)= 当期純利益 ÷ 発行済株式数
株主にとっての利益の伸びを示します。
指標を使う際の注意点
1. 業種平均と比較する
業種によって適正な水準は大きく異なります。
| 業種 | 営業利益率 | 自己資本比率 |
|---|---|---|
| ソフトウェア | 15〜25% | 50〜70% |
| 小売 | 2〜5% | 30〜50% |
| 製造 | 5〜10% | 40〜60% |
| 不動産 | 10〜20% | 20〜40% |
2. 時系列で傾向を見る
単年度の数字だけでなく、3〜5年の推移を見ることで:
- 改善傾向にあるか
- 悪化し始めているか がわかります。
3. 複数の指標を組み合わせる
1つの指標だけで判断するのは危険です。
例:ROEが高い企業でも…
- 自己資本比率が低い → 借入で膨らませている可能性
- 営業CFがマイナス → 利益の質に問題がある可能性
4. 定性情報も合わせて見る
数字だけでなく、以下も重要です:
- 事業内容の変化
- 経営陣の交代
- 競合環境の変化
- 規制や市場の動向
まとめ
| 視点 | 主要指標 | チェックポイント |
|---|---|---|
| 収益性 | ROE、営業利益率 | 10%以上あるか |
| 安全性 | 自己資本比率、流動比率 | 40%以上、200%以上 |
| 効率性 | 総資産回転率 | 1回以上あるか |
| 成長性 | 売上高成長率 | 業界平均を上回るか |
次の記事では、特に重要なROE・ROAについて詳しく解説します。