売上高と利益の関係|増収増益・減収減益の見方

決算書の読み方9分で読める編集部

企業の業績を見る際、「増収増益」「減収減益」といった言葉をよく耳にします。売上高と利益の関係を正しく理解し、企業の状態を判断する方法を解説します。

売上高と利益の基本

売上高とは

企業が商品やサービスを販売して得た収入の総額です。「トップライン」とも呼ばれます。

利益とは

売上高から費用を差し引いた残りです。「ボトムライン」とも呼ばれます。

利益には複数の段階がありますが、業績を語る際は主に以下が使われます:

利益の種類計算式意味
営業利益売上高−売上原価−販管費本業の利益
経常利益営業利益+営業外損益通常の利益
当期純利益経常利益+特別損益−税金最終利益

4つのパターン

売上高と利益の増減の組み合わせで、4つのパターンがあります。

1. 増収増益(売上↑ 利益↑)

最も良いパターンです。

前期: 売上100 → 営業利益10(利益率10%)
今期: 売上120 → 営業利益15(利益率12.5%)

考えられる要因:

  • 販売数量の増加
  • 値上げの成功
  • コスト削減の効果
  • 新製品・新サービスのヒット

注意点: 増収増益が続いていても、利益率が下がっていないか確認しましょう。

2. 増収減益(売上↑ 利益↓)

売上は伸びているが、利益が減っている状態です。

前期: 売上100 → 営業利益10(利益率10%)
今期: 売上120 → 営業利益8(利益率6.7%)

考えられる要因:

  • 原材料費・人件費の上昇
  • 値下げ競争
  • 先行投資(広告費、研究開発費など)の増加
  • 新規事業立ち上げコスト

評価のポイント:

  • 一時的なコスト増か、構造的な問題か
  • 先行投資なら将来の成長につながるか
  • 競争環境が厳しくなっていないか

3. 減収増益(売上↓ 利益↑)

売上は減っているが、利益は増えている状態です。

前期: 売上100 → 営業利益10(利益率10%)
今期: 売上90 → 営業利益12(利益率13.3%)

考えられる要因:

  • 不採算事業・店舗の整理
  • コスト削減の効果
  • 高利益率の商品へのシフト
  • 人員削減

評価のポイント:

  • 収益構造の改善(ポジティブ)か
  • 縮小均衡(ネガティブ)か
  • 将来の成長力は維持されているか

4. 減収減益(売上↓ 利益↓)

最も厳しいパターンです。

前期: 売上100 → 営業利益10(利益率10%)
今期: 売上80 → 営業利益5(利益率6.3%)

考えられる要因:

  • 市場の縮小
  • 競合との競争に敗北
  • 製品・サービスの陳腐化
  • 主要顧客の喪失

評価のポイント:

  • 一時的な落ち込みか、構造的な問題か
  • 回復の見通しはあるか
  • 新しい成長戦略はあるか

利益率の変化に注目

売上高と利益の「金額」だけでなく、利益率の変化も重要です。

利益率改善のパターン

売上利益利益率評価
100→12010→1510%→12.5%◎ 最良
100→12010→1210%→10%○ 良好
100→12010→1110%→9.2%△ 注意
100→9010→1110%→12.2%○ 構造改善

売上成長率と利益成長率の比較

売上成長率 < 利益成長率 → 収益性が改善
売上成長率 > 利益成長率 → 収益性が悪化

季節性とトレンドの分離

四半期ごとの季節性

小売業など、季節によって業績が変動する業種があります。

業種繁忙期
小売業12月(年末商戦)
旅行業7-8月、12月
建設業3月(年度末)
空調機器6-8月

前年同期比で比較することで、季節要因を除外できます。

トレンドを見る

3〜5年の推移を見ることで、一時的な変動ではなく、企業の実力がわかります。

年度   売上高   営業利益  営業利益率
2022   1,000    100      10.0%
2023   1,100    121      11.0%
2024   1,200    144      12.0%
2025   1,350    175      13.0%
→ 増収増益かつ利益率も改善:非常に良好

セグメント別の分析

複数事業を持つ企業は、全体の数字だけでなくセグメント別に見ることが重要です。

例:総合電機メーカーの場合

セグメント売上利益利益率
家電3,000903%
インフラ2,00020010%
IT・ソフト1,00020020%
全体6,0004908.2%

全体では8.2%の利益率ですが:

  • 家電は低収益
  • IT・ソフトが利益の4割を稼いでいる

このような構造を理解することで、将来性の評価ができます。

コスト構造の分析

変動費と固定費

費用の種類特徴
変動費売上に比例して増減原材料費、仕入原価
固定費売上に関わらず一定人件費、家賃、減価償却費

損益分岐点

損益分岐点売上高 = 固定費 ÷ 限界利益率
※限界利益率 = 1 − 変動費率

固定費が大きい企業は、売上が減ると急激に利益が悪化します。

業績予想との比較

会社予想との比較

決算発表時に、会社が発表した業績予想と実績を比較します。

項目予想実績達成率
売上高1,2001,18098.3%
営業利益120130108.3%

売上は未達でも利益は上回っている場合、コスト管理が優れていると評価できます。

アナリスト予想との比較

市場予想(コンセンサス)を上回る「ポジティブサプライズ」は株価にプラスに働きます。

まとめ

パターン評価確認ポイント
増収増益利益率も改善しているか
増収減益先行投資か構造問題か
減収増益○/△構造改善か縮小均衡か
減収減益×回復の見通しはあるか

売上高と利益の関係を見る際は:

  1. 金額だけでなく利益率の変化も確認
  2. 前年同期比で季節要因を除外
  3. セグメント別に分析
  4. 3〜5年のトレンドを把握

次の記事では、決算短信の読み方を解説します。