全省庁統一資格とは
国の入札に参加するなら、最初に取得しなければならないのが全省庁統一資格です。正式名称は「各省庁における物品の製造・販売等に係る一般競争(指名競争)の参加資格」。1つ資格を取れば、希望した競争参加地域にある全省庁の調達機関で入札に参加できます。
「入札って大企業のものでは?」と思うかもしれません。たしかに等級の高い案件は大企業に限られますが、小規模な案件はむしろ中小企業が主役です。まずはこの資格を取るところから始めましょう。
1つの資格で全省庁に参加できる
この資格が便利なのは、申請先が1か所で済む点です。どこか1つの省庁の受付窓口に申請し、資格が付与されれば、希望した競争参加地域にある30の省庁等すべての調達機関で使えます。
対象となる省庁等は、衆議院・参議院・国立国会図書館・最高裁判所・会計検査院・内閣官房・内閣法制局・人事院・内閣府・宮内庁・公正取引委員会・警察庁・個人情報保護委員会・カジノ管理委員会・金融庁・消費者庁・こども家庭庁・デジタル庁・復興庁・総務省・法務省・外務省・財務省・文部科学省・厚生労働省・農林水産省・経済産業省・国土交通省・環境省・防衛省で、外局・附属機関・地方支分部局を含みます。
ただし、東京都庁や大阪市役所など地方自治体の入札は対象外です。自治体の入札に参加するには、各自治体ごとに別途資格を取る必要があります。
4つの資格区分
全省庁統一資格は営業品目に応じて4つに分かれています。
- 物品の製造 — 機械器具、事務用品、印刷物などの製造
- 物品の販売 — 事務用品、医薬品、食料品などの販売
- 役務の提供等 — 清掃、警備、情報処理、翻訳、調査研究など
- 物品の買受け — 国有財産の売払い等で、国から物品を買い取る場合
複数の区分に同時申請できます。たとえばITベンダーなら「物品の販売」(ハードウェア納品)と「役務の提供等」(システム開発・保守)の2つを申請するのが一般的です。
建設工事と測量・建設コンサルタントはこの資格の対象外です。工事関連の入札に参加したい場合は、別途「建設業許可」と各省庁ごとの「建設工事競争参加資格」が必要になります。
等級とランク — A〜Dの意味
資格を取ると、企業規模に応じてA・B・C・Dの等級が付与されます。等級は参加できる案件の予定価格(発注金額の目安)に対応します。
物品の製造
| 等級 | 付与点数 | 参加できる案件の予定価格 |
|---|---|---|
| A | 90点以上 | 3,000万円以上 |
| B | 80〜89点 | 2,000万円以上3,000万円未満 |
| C | 55〜79点 | 400万円以上2,000万円未満 |
| D | 54点以下 | 400万円未満 |
物品の販売・役務の提供等
| 等級 | 付与点数 | 参加できる案件の予定価格 |
|---|---|---|
| A | 90点以上 | 3,000万円以上 |
| B | 80〜89点 | 1,500万円以上3,000万円未満 |
| C | 55〜79点 | 300万円以上1,500万円未満 |
| D | 54点以下 | 300万円未満 |
物品の買受け
| 等級 | 付与点数 | 参加できる案件の予定価格 |
|---|---|---|
| A | 70点以上 | 1,000万円以上 |
| B | 50〜69点 | 200万円以上1,000万円未満 |
| C | 49点以下 | 200万円未満 |
D等級だからといって案件が少ないわけではありません。国の調達案件にはオフィス用品の購入から清掃業務の委託まで、少額の案件が多数あります。
なお、適正な競争性を確保するために、隣接する等級の企業にも参加が認められることがあります。たとえばC等級の案件にD等級の企業が参加できるケースもあります。
付与点数の計算方法
等級を決める「付与点数」は100点満点で、企業の経営指標をもとに機械的に算出されます。審査員の主観は入りません。
物品の製造の場合(合計最高100点)
| 審査項目 | 配点 | 評価基準の例 |
|---|---|---|
| 年間平均生産・販売高 | 最高60点 | 200億円以上で60点、1億円以上で25点、2,500万円未満で10点 |
| 自己資本額 | 最高10点 | 10億円以上で10点、100万円未満で2点 |
| 流動比率 | 最高10点 | 140%以上で10点、100%未満で4点 |
| 営業年数 | 最高5点 | 20年以上で5点、10年未満で3点 |
| 設備の額 | 最高15点 | 10億円以上で15点、1,000万円未満で3点 |
物品の販売・役務の提供等・物品の買受けの場合(合計最高100点)
| 審査項目 | 配点 | 評価基準の例 |
|---|---|---|
| 年間平均販売高 | 最高65点 | 200億円以上で65点、1億円以上で30点、2,500万円未満で15点 |
| 自己資本額 | 最高15点 | 10億円以上で15点、100万円未満で3点 |
| 流動比率 | 最高10点 | 140%以上で10点、100%未満で4点 |
| 営業年数 | 最高10点 | 20年以上で10点、10年未満で6点 |
つまり、売上高が最も大きな配点を占めています。小規模な企業はD等級になりやすいですが、先に書いたとおりD等級向けの案件は豊富にあります。
各区分ごとの点数の刻みや等級との対応は、調達ポータルの付与数値・等級区分表(PDF)で確認できます。自社の財務諸表と照らし合わせれば、申請前におおよその等級を見積もれます。
8つの競争参加地域
申請時に、営業活動ができる地域を選びます。全国は8つのブロックに分かれています。
| 地域 | 都道府県 |
|---|---|
| 北海道 | 北海道 |
| 東北 | 青森、岩手、宮城、秋田、山形、福島 |
| 関東・甲信越 | 茨城、栃木、群馬、埼玉、千葉、東京、神奈川、新潟、山梨、長野 |
| 東海・北陸 | 富山、石川、福井、岐阜、静岡、愛知、三重 |
| 近畿 | 滋賀、京都、大阪、兵庫、奈良、和歌山 |
| 中国 | 鳥取、島根、岡山、広島、山口 |
| 四国 | 徳島、香川、愛媛、高知 |
| 九州・沖縄 | 福岡、佐賀、長崎、熊本、大分、宮崎、鹿児島、沖縄 |
複数の地域を選択できます。ただし、選んだ地域の案件に入札するには、その地域で業務を遂行する体制が必要です。最初は自社の所在地を含む地域だけ選んでおき、実績ができてから範囲を広げるのが現実的です。
申請のやり方
インターネット申請(主流)
「統一資格審査申請・調達情報検索サイト」からオンラインで申請できます。画面の案内に沿って企業情報を入力し、必要書類をアップロードすれば完了です。
郵送・持参
各省庁に設置された申請受付窓口へ申請書類を郵送するか、直接持参する方法もあります。受付窓口は統一資格審査申請サイトの「受付・審査窓口検索」から確認できます。
必要な書類
- 登記事項証明書(法務局で取得。個人事業主は不要)
- 納税証明書(その3の3)(税務署で取得。未納がないことの証明)
- 納税証明書(その2)(税務署で取得。所得金額の証明。2025年1月から必須)
- 財務諸表(直近2事業年度分。付与点数の算出に使用)
個人事業主の場合は「その3の3」の代わりに「その3の2」が必要です。
審査には数週間かかります。結果は「資格審査結果通知書」として届きます。
有効期間と更新
全省庁統一資格の有効期間は3年間です。現在の有効期間は令和7・8・9年度(令和7年4月1日〜令和10年3月31日)です。
更新は2つのタイミングがあります。
- 定期審査 — 3年に1度の一斉更新。有効期間の切り替わり前に案内が届きます
- 随時申請 — 定期審査を待たず、いつでも新規申請できます。この場合の有効期間は審査結果の通知日から、現在の定期審査期間の終わりまで
つまり、入札に参加したいと思った時点で随時申請すれば、定期審査の時期を待つ必要はありません。
資格を取得したら次にやること
資格を取っただけでは仕事は来ません。資格取得後にやるべきことを整理しておきます。
案件を探す。 政府電子調達システム(GEPS)や各省庁のWebサイトで、自社が参加できる案件を定期的にチェックしましょう。自社の等級と地域で絞り込んで検索できます。
入札説明書を読む。 気になる案件が見つかったら、入札説明書と仕様書を入手します。入札公告は概要しか載っていないので、必ず詳細資料を確認してください。
最初は小さな案件から。 D等級の少額案件は比較的参加者が少ないことが多く、初めての入札に向いています。まずは落札の経験を積むことを優先しましょう。実績ができれば次の案件にも有利に働きます。
電子入札の準備。 多くの案件はオンラインで入札手続きを行います。電子証明書(ICカード)の取得やパソコンの環境設定は、案件に参加する前に済ませておきましょう。